ばす物語



**作品概要

総勢4名の執筆陣による、現代パロディ@大学生生活のオムニバス短篇集。
「スクールバス」をテーマにした7組のカップルの日常をお届けします。
※\300、A5コピー本、28頁


**収録内容目録

・ばす物語 -ニール・ディランディの場合- (CP:ニール×ティエリア 担当:凪沢 凛)
・ばす物語 -ライル・ディランディの場合- (CP:ライル×リジェネ 担当:舞流紆)
・ばす物語 -デヴァイン・ノヴァの場合- (CP:デヴァイン×ブリング 担当:綾野)
・ばす物語 -ジョシュア・エドワーズの場合- (CP:ジョシュア×グラハム 担当:桃地 藍)
・ばす物語 -スミルノフ家の場合- (CP:セルゲイ×アンドレイ 担当:綾野)
・ばす物語 -沙慈・クロスロードの場合- (CP:刹那×沙慈 担当:凪沢 凛)

・ばす物語 -リジェネ・レジェッタの場合- (CP:ライル×リジェネ 担当:舞流紆)
・ばす物語 -ハレルヤ・ハプティズムの場合- (CP:アレルヤ×ハレルヤ 担当:綾野)




**サンプル文

「あ、すいませ…」
「別にかまいません」

その声の主を確認して、俺は絶句した。眠気なんて成層圏の先まで吹き飛んで行った。
『彼女』が、俺の隣に、座っていたのだ。
頭の中が混乱状態な俺には構わず、彼女は読書に勤しんでいる。とにかく会話を続けたい一心で彼女に当たり障りの無い話を持ちかけるが、短い相槌と共に見事に躱されるだけだった。
程なくして話題は尽き、俺は緊張と焦りで意味もなく携帯を開く。着信どころか充電の残量すら無く、仕方無く携帯を閉じた。やることも無くなり窓の外に視線を移せば、立ち並ぶ木々の所々に建物が見えるだけだった。即ち、駅に着くまでまだ大分時間はある。
嬉しいやら辛いやらで俺が途方に暮れていると、初めて彼女の方から話しかけられた。

「眠らなくていいんですか?今朝はとてもお疲れだった様ですが」
「え、あ、あぁ。もう大丈夫だ…」
「そうですか」

彼女は再び本へと視線を戻し、俺は何気なく口に手を沿えて緩んだ口元を隠す。本から顔を上げた彼女と目が合った事も嬉しかったが、それより何より彼女が俺を知っていた事の方が何倍も嬉しく、そして堪らなく恥ずかしかった。


                            from 「ばす物語 -ニール・ディランディの場合-」 ※ティエリアは男です、笑



「って、おい、どこで寝てんだお前は!」

若干騒ぎすぎたらしい、斜め前に座っていた性格キツそうな眼鏡の女に睨まれたが、今はそんな事はどうでもいい。
グラハムの野郎、人の足を枕にしやがった。そう、所謂、膝………いや、この単語を使ったら俺の何かが終わる。
今まで色々と恥ずかしい仕打ちは受けてきたが、今日のこれはそれの比ではない。余りの羞恥に必死でグラハムの体を揺り動かすが、一切起きる様子はない。それどころか、引き剥がそうとした瞬間に腰に腕を絡ませてきたから、俺は確信した。
こいつ、起きてやがる。
向こうも剥がされまいと必死なのだろう、腕の力は強くなる一方で、次第に呼吸が苦しくなってきた。腹がぎりぎりと圧迫される。

「痛い!痛ッ…ちょ、いてえっての!」

(こンの、馬鹿力…!)
こうなってしまうともう俺に勝ち目はない。この、非常に屈辱的でなおかつ恥ずかしい格好のまま、大学に到着するのを待つしかない。景色から推測するに、あと…10分ってところか。
――――それくらい、耐えてやろうじゃないか。

                             from 「ばす物語 -ジョシュア・エドワーズの場合-」



「ふふ…」
「あぁ!?」

何だよ、アレルヤの奴、何人の顔見て笑ってんだ。やばい、いつもの倍くらい腹が立つ。反射的にアレルヤの胸倉を掴んで睨み付けるも、奴はへらへらと締りのない顔で笑っていた。

「ハレルヤって、やっぱり可愛いね」

…は?…今コイツなんて言った?誰が、何だって?かわ…?

「…って、な…っき、気色悪い事言ってんじゃねーよ!鳥肌立ったじゃねーか…!!」
「酷いな、僕はハレルヤが可愛いと思ったから素直に可愛…」
「んな何回も繰り返すな!!」

可愛いって。意味分かんねぇ。大学生にもなって、双子の弟に「可愛い」?いや、その前に俺は鈍くさいアレルヤの方が兄貴だなんて絶対認めねぇけど。
アレルヤの方に目線を向けると、まだ気持ち悪い笑顔を浮かべている。顔の造りは一緒なんだから、やめろって。頼むから。

                             from 「ばす物語 -ハレルヤ・ハプティズムの場合-」



リジェネは、俺が知っている、という事実が気に入らないのだ。彼の内側で燻り続けている感情、その向けられた先を知っている俺が気に入らないのだ。
彼は、俺の兄に恋をしている。

「そういえば、この間借りた本、まだ読み終わってないんだ。もう少し借りてていいか?」
「かまいません。あの本は専門用語が多いですから、時間がかかるでしょう?」
「そうなんだよ。ちょっと読んでは注釈見て…、内容が面白いから止まらなくなって、性質が悪いったらない」

他愛の無い談笑をする兄とティエリアを、リジェネはじっと、皮膚で伺っているようだった。
勿論、彼の手元にはいつものように文庫本があって、視線もきちんと文字列を追っているのだが、俺にはそれが彼の必死の抵抗や誤魔化しのように見えて仕方が無い。
悟られたくは無いが、自ら吐露もしたくない。出来る事なら、潰してしまいたい。彼はそう思っている。俺の"遊び"や"軽口"と同様、同質のものだ(俺だって本当は気が付いている。ストレスを解消するため、或いは、楽しいから、というのは総て言い訳や建前で、本質はただの"代用"で"逃避"だ。だから、何か空虚で、抜け出せない。今更やめられやしないのだ、悪ふざけの延長に据えた彼への真摯な告白も)。

                             from 「ばす物語 -ライル・ディランディの場合-」































































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