突然の雨にコンビニでビニル傘を買おうとした手を、矢庭に掴まれる。

「な、」

振り返った先で、酷く柔らかな感触を持った金髪が揺れて、見知った顔が微笑んでいた。
彼は俺の手を掴んだまま、もう一方の手を軽く持ち上げる。その手に握られた、派手な橙色の傘。そして、機嫌が良いのか歌うように。

「よかったら、」

送ってやるけど、と口にしながらも、男の手はもうコンビニのドアを開けている。間抜けな事に、俺はガキみたいに手を引かれてコンビニを後にするしかない。何も買っていない客に向かって「ありがとうございましたー」と店員が声を上げた。
軒先に立ったディーノはすました表情で慇懃に傘を差し掛けてきて、この手に雨具が無い以上、なにより、彼の手が俺の手をがっちりと掴んで離さないので、仕方なくその下へ潜る。
なにが「よかったら、」だ(全ては予定された未来で、不可視のそれが入り込む余地なんか爪の先ほども無いのに)。
二人で入るには小さな傘からはみ出さないように寄り添って歩くのはなんだか居心地が悪くて、けれど、気を抜くと唇は歪んでしまいそうだった。

の傘

2007.5.12   上 au.舞流紆
Short Sentences of "Scolorimento" Color No.15 Orange * Special Thanks for the planning ... dear E





























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