ディーノがそういう物を使っているというのは、何処となく。

「…似あわねぇ、」

仕事が終わるまで此処で待っててくれ、と言われ、通された書斎のテーブルにぽつんと置かれていた物は、ペンかと思いきや万年筆で、随分と古い品のようだった。殆ど黒に近い赤色をしていて、材質はよくわからないが、間違いなく高価な物だという事くらいは察する事が出来る。
あいつにしては、と、ぼんやりと考えながら、それを冷えた木目へ転がした。実際に持ってみれば間違いなく様にはなるだろうが、あの手にはボールペンの方が似合う気がしている。
けれど、部屋を見回せば、この万年筆よりももっと骨董品じみた椅子や茶器、絵画が所狭しと並んでいた。恐らく彼の先代までのボスが収集したものだろう。見た目の華やかさよりも、目立たないところに意匠が凝らされたものが多い。趣味は悪く無いけれど、まるで亡霊だ。俺も昔はこんなものに囲まれて暮らしていた。ディーノは今も暮らしている。

「ごめんな、ハヤト。一寸手間取って」

ふいに開けられたドアから現われた男に、だから、俺は「別に」と首を横に振って、「外、出たい」と言った。薄暈けた昼の光の下で笑うディーノが見たかった。

臙脂の万年筆

2007.7.7   上 au.舞流紆
Short Sentences of "Scolorimento" Color No.17 Marron * Special Thanks for the planning ... dear E





























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