「雨だ」 隣を歩くディーノの呟きに顔を上げると、鼻先に冷えた雫が触れた。 しかし、見上げた空は午後の穏やかな陽気のままで、ぼんやりとした薄い水色の表面に、綿の様な雲を貼り付けている。多分、通り雨だろう。蕩けるような金色の陽光を映しこんだ雨粒が、パタパタと音をさせながらアスファルトに足跡を残していく。 「通り雨だな、きっと」 俺の考えている事と殆ど同じ事を口にしたディーノは、ちら、と此方を振り返る。長いその睫毛の先に、小さな雨粒の欠片が幾つか付いているのが見えて、ジャケットの柄も無地から斑模様に様変わりしつつあった。自分の身体を見下ろすと、ジーンズがそうなりかけている(安物だけれど気に入っていた一本だったので、少し悔しい)。 「如何する、走るか?」 問われて、俺は「面倒くせぇよ」と首を横に振った。ジーンズやダイナマイトの心配をするのは今更だし、少し濡れたくらいで風邪をひくほど柔じゃあない。 鼻先にまた一つ、ディーノの髪のような色をした雫が落ちた。 金の雨 2007.1.12 上 au.舞流紆 2008.2.4 加筆修正 Short Sentences of "Scolorimento" Color No.22 Gold * Special thanks for the planning ... dear E |
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