ようするに、ハヤトは一般のサイズよりも随分と薄っぺらな身体をしていたので、こうして抱き締める度に俺の手も腕も余ってしまって仕方が無いのだった。そもそもの年齢が大分離れているから当然と言えば当然なのだろうが、これでは"抱き締める"というよりは、"包む"といった方があっているように思えて、そして、その思考はふと俺の脳裏に浮上する。
意識して反芻すると、其処で使用されている表現(包む、のくだりだ)が何処と無くロマンチックに過ぎるように感じて、自分の考えながら恥ずかしくなり、思わず咳き込むと、耳の直ぐ傍で「俺にはうつすんじゃねぇぞ」という非難めいた声があがった。如何やらハヤトは俺が風邪かなにかをひいていると勘違いしたらしい(もしそうだとしたら、俺はひょっとして物凄く酷い言葉を投げられたのじゃあないだろうか)。

「いや、一寸、咽ただけ、で」
「…紛らわしい事すんな」

ハヤトはそう漏らすと、まだ咳の止まらない俺の背中を幾度か軽く叩いた。
今のもわりと酷い言葉だったような気もするが、気分自体はあながち悪くもならなかったので、追求はしない事にする。そんな事をするよりは、腕の中の恋人を目一杯抱き締めるなり、包むなりした方が余程効率的で、幸せだ(先程のロマンチック云々に関しては開き直る事に決めた)。
改めて抱え直した身体は小さくて、骨と皮ばかりで、抱き心地は少しも良くなかったけれど、酷く甘やかにして穏やかな気配がする。薄灰色をした髪に鼻先を埋めて笑った俺に、ハヤトが「今度は何だよ」と言うので、「幸せだな、と思って」と返す。

「言ってろよ」

唸った嫌そうな声とは裏腹に、彼はその白い耳を仄かに赤くして、俺の首辺りに顔を埋める。
あぁ、これは。如何しようもなく、

可笑しいくらいにロマンチックだ。

2007.1.26   上 au.舞流紆
アンケートで「甘め」を御所望の方が多かったので。甘くても痛くても、デノ獄=ハグの方程式。













































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