温いシャワーを浴びながら、体内に残るものを掻き出す、という行為は何時までたっても慣れないが、確実に俺の中でのルーティーンになりつつあった。それは酷く情けない事のように思えて、けれども、ディーノにそうされるよりは幾らか精神衛生上に良い気がしたので、此処暫くは自分で済ませている。大丈夫か、と心配するディーノを振り切って風呂場に駆け込んだのは大分前の話で、二人分の体液に汚れた身体を漸く洗い終えたのがつい先程の話だ。
指の先にまだあの白い残滓が残っている気がして、力任せに石鹸の泡を塗りたくった。荒れた爪は瞬く間に清潔な白の下へ隠れる。俺の出したものだろうが、ディーノの出したものだろうが、そんな事は問題じゃあない。落とさなくてはいけなかった。落とさなくては、ずっと情けなくて惨めで、それで、あの糖蜜色の目からは逃げられない。落とさなくてはいけなかった。でも、きっと逃げられない。今までもそうだった(これからもそうだろう)。
案の定、立て付けの悪い風呂場の扉を開けると、ディーノが待っていた。なにくれと世話を焼きたがる男は、洗わせてくれないなら拭かせてくれ、と言わんばかりにタオルを広げている。
やはり如何あっても逃げられないのか。立ち尽くしていると、白い布地が身体を覆う。一回り大きな手に、労る様に撫でられる。この手が三時間程前までは俺を追い詰めて、何もかも奪って、奥までを探って、緩慢に掬い上げて、そうして突き落として、笑っていたのだ。ああ。
ディーノがいつものように、俺の鼻先で甘たるく笑う。同じくらいに甘たるいキスをする。金の睫毛は頬へ触れて、薄く熱を残す(息が詰まる)。そして、耐え切れないくらい甘い声で言う。

「早く服着ろよ。風邪ひくぜ?」

糖蜜の瞳はもう一度笑い、惜しみないキスは髪に触れる。
酷い話だ。あの情けなく惨めな行為と、この柔らかな微笑やキスが同じ天秤にかけられている、というのは(如何足掻いても後者にしか傾かない、というのは)。

生産的行為に関する考察 3

2006.3.6   上
2008.6.17   加筆修正 au.舞流紆
1より先に3が見つかる罠。獄寺がやや潔癖症気味だと良くて、ディーノがそれを上回る甘い男だと良い。


























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