「愛してる」 慣れ親しんだ祖国の言葉で、ハヤトがそう言ったので。 「俺も愛してる」 当然の様にそう返した。返して、そうして、俺は笑った。愛しくて、けれど、可笑しかったのだ。俺達は十年という決して短くない時間、所謂恋人という役割を互いにこなしてきたけれど、彼の口からその言葉が出たのは数えるほどしかなかったからだ。それを今になって、彼は幾度も口にする。 ディーノ、愛してる。 また、ハヤトがそう言った。俺は笑う(可笑しくて、そして、幸せで)。 「俺も愛してるよ、ハヤト。何度も言っただろ」 諭す様な笑みを向けると、翠の瞳は、ちら、と俺を見る。口を開く(その仄白んだ唇を、)。 だけど、俺は、お前に何も返してこなかったから。愛してる、ディーノ。愛してる。 噛み締めるのに似た調子で、呻く様に繰り返すハヤトの手には、滅多に握られない銃が在って、その銃口は過たず俺に定められていた。ハヤトは相変わらず、愛してる、とそればかりを言う。 これだけ情熱的に彼にそう言って貰えるなら、勝ち目の無い造反だって悪くは無かったな、と、ぼんやりと考えて、そんな事を思考する俺の脳味噌は、その内銃弾に吹き飛ばされるだろう(それにしても、裏切り者に対してこの処刑はいささか甘やかに過ぎはしないか)。きっと、その時もハヤトは「愛してる」と呟くか、或いは、そう叫ぶのだ。それはとても魅力的で、素敵な事の様に思えた。 ハヤトがもう百回目くらいの「愛してる」を唇に乗せて、俺は最後にもう一度笑う。 「死ぬほど愛してるよ、ハヤト」 約百回の告白 2007.1.5 上 au.舞流紆 こんな物を書いた私は初詣で家内安全を二の次にして、本誌でのディーノと獄寺の幸せを願いました(このスットコドッコイ) |
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