結局は、生まれた時から分けられている。
俺がそう言うと、ハヤトは顔を顰めた。予想通りだ(何故なら、彼はそれをこそ憎んでいるのだと、俺は知っている)。
だが、否定の言葉は返ってこなかった。これもまた、予想通りだ(何故なら、彼は、その理不尽な仕掛けが"全き"と表現出来るほどの完璧さでもって人生を縛るのを知っている)。
翠色をした瞳は、苦々しい、というよりは、むしろ苦痛を訴えるように瞬いた。その白い指先が、握り締められて一層の白さを帯びる。紙の白さだった。
笑う。俺は彼に向かって銃口を向けている。

「けどな、いい加減に飽きたろ、そんな事には」
「な、にを、」
「選ばせてやるよ、」

消すか、消されるか。お前にだけ、ハヤト。
手の内の銃を回し、グリップを差し出すと、彼は大きく身動いだ。身動ぎ、瞬間、足元に視線を走らせた。その先で転がっているのは、彼の同胞だ。
掌を、銃身の硬質な感触がするりと滑る。

「罪滅ぼしだ、」

命と同等程度のツケはあるだろ。蜂の巣にしてくれても構わないぜ、俺はお前に何もしてやれなかったし、今も手酷く裏切った。お前にはその権利が有る。
物問いたげに戦慄く口許へ笑みかけると、彼の顔色は一層蒼白になった。けれども、身動ぎはしなかった(彼はあの薄暈けた灰色の髪の下を何に占められているのだろう、ありきたりな憎悪か、度し難い恐怖か、御せない憤りか、疑問か、全てか、それとも、かつて唯一つと囁き合った甘さのみか)。
ゆっくりと、グリップを握った手が上がる。磨かれたバレルは、黒猫の毛並みのように艶々と、鬱屈した光を反射する。銃口はその獲物を捉える。
俺は、と薄い唇が開く。

「アンタがそうやって中途半端な選択肢を投げて寄越すのが、昔、俺は死ぬほど嫌いだった、ディーノ、」

ハヤトはそう呟いた。
滑稽。全く以て、滑稽だ。この世界には不相応な表情を貼り付けて自らのこめかみへ銃口を押し当てる彼は、けれども、華やかだった。
そして、脈々と継がれる血は、ただ、この口角を攣るように歪ませる(幕引きさえも甘く、)。

奇術師の血統

2008.5.15   上 au.舞流紆 Theme from 模倣坂心中
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