繰り繰られ、繰り繰られして、居る。
繰らるる者が、繰るは誰ぞと問うは愚かしき事だ。全ては盤上に完結する至上の布石、乱れ無き陣、然るべき軌道を築くための事物。
問うは許されざる愚行であり、浅ましくも詮無き事と覚えるべきである(駒に思考など要らぬ、その手足、或いは口さえ有れば良いのだ)。


「アンタ、疑問を持ったこたぁねえのかい。自分が何者で、何処へ往くのか」
酒は、普段からかまびすしい男を、さらに喧しくしていた(酒とは全く碌でも無い物だ)。
無い、と答える。
「宿世の定めるように在り、定めるところへ行き着く」
「宿世、はは、アンタにしちゃあ温い事を言う、」
それとも、宿世もその手の内に在るてえのか。それならアンタに似合いそうだがよ。
長曾我部は口を歪めた。筋肉の隆起した肩が揺れる。行灯の灯を照り返す白金の髪ざしが、漂うに似て揺れる。放埓な波の如き気性は、今は穏やかに凪いでいる。
勧めを遣り過ごせずに干すと、呑み慣れぬ熱さが舌を舐め、喉を灼いた。
酔うておる、と頭の隅で考えている。酔うておる。
盃が干上がり、灯火の揺れるに合わせて薄ら光るを見る。
「…我とて繰らるる者ぞ、」
だが、その由問わぬ。
戯言めいて吐くと、男は顔を曇らせた。かと思うと、神妙な面持ちで此方の手の盃を満たした。そうしてから、またも薄く笑い、ちったぁ尋ねてみろよ、と何か諦め荒んだ風情で漏らし、笑う(恐らく、男の太い腕には一縷たりとも纏わりつかずにいるだろう。それとも、今この時に縺れただろうか、紅に染め抜かれた、)

絡繰り人形の絲

2008.6.20   上 au.舞流紆 Theme from 模倣坂心中
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