千々に引き千切るかの如き勢いで打ち合わせた刃が、劣らぬ者同士の拮抗に甲高い悲鳴の様な声を上げた。互いの得物、太刀筋に至るまでを既に知り尽くしている今、必要なのは力、そして僅かな隙を見抜く眼と、それを逃さぬ武将としての器量だ。だが、俺と彼とは(自惚れるなら)それすらも近しく、瀬戸際の攻防が続く。
「Ha、それで仕舞いか!?」
ぎちぎちと、白刃の鳴く間に、彼が言う。声音は獰猛にして、表情もまた然りだ。彼は純粋にこの仕合を愉しんでいる。それは俺とて同じ事だった。待ち焦がれた瞬間、この血の滾る様な昂揚感こそが、それを証明している。
「っ、まだ折れはせぬ!」
渾身の力で六爪を跳ね上げると、男は軽く口笛など鳴らしながら、後方へ跳び退った。詰まった間合いが開く。先程からこの繰り返しだ。
だが、飽かぬのは何故だろうか。対峙している男が、これまで手合わせをした中でも随一の者であるからだろうか。それとも。
「考え事してる暇は無ぇぜ、真田幸村ァ!!」
一息に間合いを詰めてきた男が、六爪を振り翳す。それを受け止めながら、はね返し、彼の懐を突くも、寸でのところでかわされ、逆に片槍を三爪に絡げ取られてしまう。まだ終わらぬ、と突き出した残りの一槍も、やはり残った三爪に止められた。互いに身動きならぬ状態で、男は、愉しませてくれるじゃねぇか、と笑う。
「アンタも愉しんでるか? 真田」
「無論、」
震えが止まらぬ、と答えれば、鷹の眼は満足そうに細められ、俺はそれに笑み返しながらも、如何様にこの状況を打破するかを考えている。恐らく、男も同じ事を考えているだろう。互いを捻じ伏せるためだけの、策を(睦言さえ落としてみせた、あの遠き日を切り裂く事すら厭わずに)。

遙か眠る

2007.6.8   上
2007.7.12   加筆修正 Theme from 約30の嘘 *An anonymous request (※「蒼紅一騎打ち的に敵対しあう伊達と真田」)
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