モトナリさんは高校で教師をしてます。数学教師です。
モトナリさんは数学教師としてとても有能でしたが、けれど、どちらかといえば冷徹鬼教師としての方が有名でした。
なにしろ、普段は子供やお年寄り相手にカツアゲしたりと少々おイタがすぎるヤンキーのお兄さん達も、モトナリさんの前では縮こまってビクビクと首を竦めながら大人しくしてるくらいの鬼教師なのです。
一般の生徒などはモトナリさんに連れられて指導室に入ったが最後、この世のものとは思えないようなものを見てしまったかのような表情で出てくるのでした。中で何がおこっているかなどは、勿論誰も話したがりませんし、あえて知りたがる人もいません。

さて、そのような具合で校内では恐怖を体現しているモトナリさんですが、彼にもお友達と呼べる存在がいます。モトチカさんです。
モトチカさんはモトナリさんと一緒に暮らしていて、仕事に疲れきって帰宅するモトナリさんをいつも慰めてくれます。たとえ夜遅くに帰っても、モトチカさんは必ず待っていてくれるのです。
モトナリさんはクラスの困った生徒の素行や、口先だけのボンクラ校長の空気を読まない言動にイラッとさせられた事なんかを毎日山の様にモトチカさんに聞かせましたが、もともとが聞き上手のモトチカさんは文句も零さずに窓辺でそれを聞いてくれましたし、それから、夜の温い風の中で優しく頷いてもくれるのでした。
吐き出すだけ吐き出してすっきりしたモトナリさんは夕飯と風呂が済んだらすぐに寝てしまいますが、モトチカさんはいっこうに気にしません。彼は一人で水を飲み飲み、風にあたりながら、のんびりしてます。
夜中に目が覚めてしまったモトナリさんは、そうして風に吹かれながらこっくりこっくりと眠たげに頭を揺らすモトチカさんを見るのがそれなりに好きでした。彼の頭の色が、月の光の下では何かと綺麗に見えるのです。そして、それを見た翌朝などは不思議と気分良く起きる事ができるのでした。

そういうわけで、モトナリさんはモトチカさん(彼は大変綺麗な紫色をした紫陽花でしたが)を大層気に入っているのです。


モトチカさんとモトナリさん

2007.9.15   上 au.舞流紆
妖精さんは出てきません。このモトチカさんはただのアジサイです。






















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