戦場は何処も彼処も赤い。
彼の色は、ともすれば其処によくよく溶け込んでしまう類の色だったが、しかし、何故か格段に目につくのだった。

(それは、こいつの動きが滑らかに過ぎるからだ)

屋敷の庭先で鍛錬に励む男を眺めながら、俺はそう考える。
幸村は何処にいても(といっても閨は別だ)得物を手離さない。奥州に来る時も、勿論己の屋敷にいてもだ。そして、時間が在る限り、得物に触れている。日々の鍛錬を欠かさぬから、使い込まれ、慣れ馴染んだ彼の得物は、宛ら彼の身体と等しいものになっている。乱雑で粗野な動きをする者の多い戦場では、彼のそうした一連の動作の引っ掛かりの無さが余計に目立つのだ。そうして、俺は彼のそういった、普段の幼さを拭った箇所に在る物を殊更好いている。
浅く息を吐きながら、幸村が腕を振り翳した。二槍の切っ先は、まるで糸にでも繋がれている様に酷く滑らかに空を斬る。この様子では、あと半刻はこうしているつもりだろう。その間に溜まっている政務でも片付けてしまおうと、縁側から座敷に上がる。
彼がその額にあてた赤を戦場の温い風に任せながら、この眼前に立ち塞がる日を、俺は静かに待っていて、それはきっと遠くない未来の話だ。

燃えるような赤を揺らす

2007.1.17   上
2007.1.21   加筆修正 Theme from ラストレターの燃えた日
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