「殺める事の、」 殺める事のなんと易き事よ。なぁ、長曾我部。 緩やかに弧を描く唇はそう囁いて、地へ這い蹲った俺の首筋へ輪刀が宛がわれる。可愛い部下は皆、その鈍い光を宿す刃に魂を吸われた。跳ね返すだけの力など、俺には少しも残ってはいなかった(それが出来たなら、殺める事もさせなかっただろう)。 「長曾我部」 元就は呟いて、俺を見下ろしている。酷薄な薄茶。その奥の、微かな温度。 「生かすはそうもゆかぬ」 皮肉に歪んだ表情を、また少し、元就は歪める。 一連の言葉は正しく的を射て、その矢は俺すら討ち抜いた。 傷み薄らぐ意識の淵で、あの白い指先が仄かに頬をなぞる気配がして、それきり、俺も彼も、 憂へ吟ひて、独り 2007.3.4 上 (※BASARA祭春の陣 花卉ノ宴 掲載) au.舞流紆 |
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