降頻っていた。叩きつけるというのでなく、音もなく、然れども確かに。 梅雨の生温い気色を孕んだ一連の雫の、その帳の内に足を着けて立っているのは、今や己ただ一人だった。先刻まで同様に立っていた筈の男は、今やその半身を泥に埋めている。 蒼穹は曇天の上、蒼き影は泥濘の下へ、うち沈んでいる。 六爪から成る矜持は散り散りに、薄ら血を纏い、その冷えた刀身を晒し、刃を打つ温さは己の持つ二槍さえもしとどに熔かしてゆく。 落つ。 なれど、取り縋る事も出来ぬのだ(この足は、それでも踏み締めている。彼の人の影を覆い尽くさんとする地を、泥を、)。 「宿世と知らば、」 呟きは消ゆ。もとより先も言わぬ。聞く者だに無いのだ、それが如何ばかりの意味を持つというのだろう。 指の股を流れ落ちゆくは己の、彼の人の血潮か、天より来たる雫か、または身の内からのものか、判りようもない。 ただ、只管、只管に総ては、 土に染む 2008.5.1 上 au.舞流紆 |
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