可視であれ、不可視であれ、殉じてもいいと思わせる存在が神であるのならば、彼のそれは一体何だったのだろう。 亡くした家族か、憎悪か、或いはもっと別の何かだったのだろうか。 私の想像の及ばぬような、凡そ人間が抱えるような、そのようなものだったのだろうか。 私の神は考え得る限り明確だった。端的であり、真実だった。その下では揺らぎなど無かった。概念として確立されていたせいだ。それは幾何学の美しさだった。そして、それを打ち壊したのはただ一縷の呪いだ(こうも縛りつけるものを呪いと呼ばずしてなんと呼べばいい)。 私は彼の神を守りたかった。何故なら、私の神はもう何処にもいなかったし、私は彼の神を少なからず脅かしたからだ。それこそが呪縛の元凶であった事は十二分に承知していたが、そうしたかった。そうするつもりで彼の部屋にロックをかけ、コクピットへ乗り込み、出撃した。 迷いは無かった。ただ守りたかった。 (耳慣れたAIの音声プログラムは彼の名を只管に羅列し、私は「嘘だ、」と慟哭する。耳鳴りが酷い。吐き気は無かったが、肋骨の中程が軋んでいた。) ロックオン・ストラトスの神は彼と共に死んだ。 わざわざ言及するまでもない。やはり私が殺したのだ。私が彼の半分を奪った時から崩壊は始まっていて、扉を閉ざす事では止められる筈もなかったのだろう。 最後の通信画面の奥にいた男、その地球に似た色をしていた瞳は美しかった。 そうして、私は彼の神を知るに至る。 一度失われた私の神は、再び呱呱の声をあげた。 彼の神は輪廻するだろう(私が在る限り、この涙が涸れない限り、幾度でも、) わたしのかみさま 2008.3.16 上 2008.4.7 改稿 au.舞流紆 (あなたとわたしの、わたしたちの、わたしただひとりだけの、) |
SEO | [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送 | ||