バチバチと火花を散らしているライルさんとティエリアさんの間で、ストラトス伯はおろおろするばかりです。
その様子といったら、まさしく"役立たず"そのものでしたから、まさに一触即発といった風情の二人に遠慮無しに割り込んだのは、別の人でした。
バン、という大きな音をたてて、いきなりあばら家のドアが開きます。
三人が思わず顔をそちらへ向けますと、そこには一人の人間が立っていて、それを見たストラトス伯とティエリアさん、それに、ライルさんの目は、まんまるになりました。
白い肌に真っ赤な目、葡萄色の髪。
その人の顔付きはティエリアさんにそっくりですが、髪だけはくるくるの巻き毛です。
それに、お洋服もティエリアさんが着ているような真っ黒のだぼだぼローブではなくて、薄い水色に白を重ねたものを着ています。
あんまり似ているので、ストラトス伯が吃驚仰天していると、その人は挨拶も無しにつかつかと歩み寄ってきて、こう言い放ちました。

「ライル、帰るよ」

ティエリアさんよりも高い、何処か気だるそうな声です。
でも、なんだか従わなくてはいけないような気にさせられるような、そんな声でした。
にも関わらず、ライルさんはストラトス伯にしがみついて喚きます。

「嫌だ!俺がどれだけ兄さんを探し回ってたか、リジェネ、お前だって知ってるだろ!」

ライルさんは駄々っ子みたいに首を振りました。
ところが、ティエリアさんのそっくりさん、リジェネさんはそれを綺麗に無視して、片手でライルさんのマントの首根っこを掴み、もう片方の手では腰のホルダーに下げていた銀の銃を抜きます。
そうして、ライルさんのおでこに銃口を押し当てて笑います。

「帰るよ」

本気です。
ちょっとでも抵抗を続けたり、逆らったりしたら、脳天をぶち抜く気満々です。
これには、さしものライルさんもかないません。
顔を真っ青にして、うう、と呻きながら、ストラトス伯から離れました。
しょんぼりしてるライルさんのマントを、逃がさないようにしっかりと引っ掴んで、リジェネさんがにこっと笑います(笑顔だけは天使のようでしたが、他の部分は軒並み大悪魔のようでした)。

「お楽しみのところを邪魔して悪かったね。後はどうぞごゆっくり」

どうやらリジェネさんも何かおかしな勘違いをしてるみたいです。
ともあれ、呆然としているストラトス伯とティエリアさん(ストラトス伯はまた顔を赤くしていましたが)にヒラヒラと手を振って、リジェネさんはあばら家から出て行きます。
引き摺られているライルさんは「兄さん!俺が絶対助けてやるからな!」だとか「モヤシ魔女め、いつか見てろ!」だとかあれこれと喚いていましたが、それもあっという間に森の奥へ消えてしまいました。
後に残ったストラトス伯とティエリアさんは、暫くの間、開きっ放しのドアを見つめっ放しでした。

ストラトス伯とティエリアさんと
もう一人のストラトス伯 2

2008.10.15   上 au.舞流紆

ブラコンライルさんはリジェネさんには勝てません、ブラコンライルさんはティエリアさんのことを女の子だと思い込んでいます






























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