月が空の高いところを過ぎ、やや傾きが深くなった頃、小さなフラットでは、ライルさんとリジェネさんの舌戦が繰り広げられていました。
論題は『リジェネさんが任務に就いている間に、ライルさんが出来心で働いてしまったおイタ』、つまり、ライルさんの浮気に関してです。
ソファに腰かけて脚を組み、腕も組んだリジェネさんが、板張りの床へ正座してうなだれているライルさんに総攻撃を仕掛けています。

「本当にどうしようもないくらい節操のない下半身だね。発情期が決まっている分、犬や猫の方がまだマシだ」
「返す言葉もございません…」
「それに何?"寂しかったから"?ふざけないで。貴方、任地に行く前の僕に何て言ったっけ?"頼むから浮気しないでくれ。俺の事忘れないでくれ"、そう言ったよね?」
「お、おっしゃる通りです…」
「なのに、自分はしっかり浮気。最低を通り越したクズのする事だ。貴方みたいな顔とテクニックだけのろくでなしに身体を許していたかと思うと、虫唾が走る」
「あの、その、め、面目ない…」

絶え間なく浴びせられる言葉には、容赦の「よ」の字もありません。
どんどん小さくなっていくライルさんに、リジェネさんはついにとどめを刺しにかかります。

「…その謝罪が口先だけじゃないなら、こんなことは簡単だろうね」
「こんなこと?」
「今日から一週間、僕に触るのを禁止する」

この罰則に、ライルさんはもちろんびっくり仰天です。

「え、嘘!!冗談だろ!!??」

そんな風に叫ぶと、跳ね上がるように立ち上がって、リジェネさんの肩を掴もうとしましたが、それは出来ませんでした。
なぜって、リジェネさんがライルさんの眉間に銃口を押し当てていたからです。
ぐっ、と圧力をかけて、ライルさんを元のように床へ座らせると、リジェネさんは言いました。

「本気だよ。僕が冗談を嫌いなのはよく知っている筈だ」
「や、知ってるが、」

でも、だけどな、と言い募るライルさんの顔は、最早真っ青を通り越して真っ白になってしまってます。
何か質問があるなら簡潔に、と言うリジェネさんに、真っ白なライルさんは、怖々と尋ねました。

「えーっと…その、触るなって事は、キスは?」
「一切許可しない」
「ハグも?」
「認めない」
「…咬んだりなんかは、」
「愚問だね、全面不可だ」

にべもない回答に、ライルさんは、あわわわ、と口に手をやりました。
それから、斜め下から憐れっぽくリジェネさんを見上げて、両手を合わせ始めます。

「…リ、リジェネさん、俺この通り反省してるんで、キス、いや、せめてハグくらい、」
「禁止は禁止だよ。妥協の入り込む余地は無い」
「…う、浮気してやるー!」
「それ、脅しのつもり?良い度胸だね。この後におよんでまだ出来るものならやればいい。全裸にネッカチーフだけつけた状態で大聖堂のてっぺんから吊してあげるよ」
「このひとでなし!…咬むどころかキスもハグもない生活なんて、お前、俺が灰になっちまってもいいのかよ…!」
「もとはと言えば、貴方が原因だから自業自得だね。むしろ、今すぐ灰にされないだけ、僕の慈悲に感謝して平伏し、節制に努めることだ。これ以上質問が無いのなら、話は終わり」

リジェネさんはぴしゃりと撥ね付けて、お風呂へ入りにいってしまいました。
一方、下手に出るのから、脅し、泣き落としに至るすべての対策を叩き落とされてしまったライルさんは、部屋の隅っこの床に座って、メソメソ泣きべそかいてます。

ライルさんの湿っぽい夜のおはなし

2008.9.29   上 au.舞流紆

ストラトス伯は慎ましやかだし、ティエリアさんはネンネだしで、あまりこういったストレートな口喧嘩シーンが書けない環境ですから、ライルさんには申し訳ないですがとても楽しかったです、
しかし、このおはなしのリジェネさんはライルさんのことがだいすきすぎると思う…、






























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