此処最近のリジェネさんは、吸血鬼ハンターとしての任務が終わった後、自分の事務所へ帰るのが一番億劫でした。
何故って、ちょっと喧しいのが一匹、いつの間にか住み着いてしまったからです。
教会への報告を終え、時計の針が夜の1時をまわった頃、リジェネさんが夜でも人通りの多い街中にあるフラット(此処が事務所なのです)のドアを開けるなり、そいつは飛び出してきました。

「リジェネ!」

そんな嬉しそうな声と一緒に、リジェネさんの視界が真っ黒になります。
ヘイゼルの髪に青い瞳、背の高い身体は月の無い夜よりも真っ黒なタキシードが覆っています。
リジェネさんは、例の厄介者(彼はライルさんというお名前の吸血鬼でした)にぎゅうぎゅうと抱きしめられていました。
抱きしめられるだけならまだしも、思い切り頬擦りされたり、挙句の果てには髪だの額だのに軽いキスまでされるものですから、リジェネさんはかなりうんざり気味です。

(…最悪だ、)

往来の人々の「あらあらまあまあ、」という好奇の眼差しに居たたまれなくなったリジェネさんは、とにもかくにも家の中に入ろうと、ライルさんをくっつけたままで部屋の中へ無理やり突き進んでゆきます(その間中、ライルさんは「俺もう寂しくて灰になっちまうかと思った」だとか「相手の吸血鬼に変な事されなかったか?お前、中身はちょっとアレだけど見た目が良いから、」だとか「今晩少しだけ咬まれるのと、明日の夜に目いっぱい咬まれるのとどっちがいい?」だとかあれこれと喚いていましたが、リジェネさんはそれを実に綺麗に無視しました)。
やっとの事で到達した事務所兼自室兼寝室兼客間兼エトセトラ(つまるところ、とんでもなく多目的なLDK)は、塵一つ落ちていません。
生活感が無い、というのではなくて、整理整頓されている、といった感じです。
また勝手に掃除をしたな、と思っているリジェネさんに、多少は満足したのか、ぎゅうぎゅうする力をちょっとだけ緩めたライルさんが言いました。

「そういえば晩飯食ったか?まだだったら、悪い、今から作り直す」
「作り直す?」
「もう今日は帰ってこないと思ったから、隣近所に配っちまって、」

鍋の底にカスみたいなのしか残ってないんだ。
そう言って、ライルさんは眉毛を少し下げました。

ライルさんとリジェネさんと
残り物のポトフのおはなし

2008.9.20   上 au.舞流紆

黒設定ライルさんとの落差がますますひどくなる白設定ライルさん、
彼はリジェネさんがハンターの任務についてる間はフラットでお留守番をしています、
近所では「愛想が良くて美形の執事さん」と評判、(しかしストラトス伯もライルさんもたいへんな庶民だな…)






























SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送