「聖体拝領を受ける吸血鬼なんて、司教たちが聞いたら卒倒するだろうね」

そう言ったリジェネさんを、ライルさんは、此処は教会だぞ、と溜め息混じりに咎めましたが、けれども、リジェネさんは薄笑いをやめません(リジェネさんにとっては、司教様を貶すことも、ライルさんの正体を不用意に口にすることも、注意を払う対象ではありませんでした)。
それどころか、こんな風なことまで喋るのです。

「ああ、訂正がいるかな。貴方、吸血鬼じゃなくて、"半分だけ"の"成り損ない"だったね」
「ああ、そうだ。"半分だけ"の"成り損ない"のうえに、置いてけぼりをくらった"規格外"だよ」

解ったなら、ほら、行くぞ。
呆れた風に口にして、大して傷付いた様子もなく荷物を担いで歩き始めたライルさんを、リジェネさんはさも面白そうに眺めて、その後に続きます。
ライルさんが自虐的な言葉を零すのを聞くことが、リジェネさんは大好きなのです。
ライルさんはそんなリジェネさんを、ちら、と振り返って、こいつの良いところは顔と狩りの腕だけだ、なんて思いながら、教会の重い扉を開きました。
外はもう真夜中、空は真っ黒なベロアに覆われてしまっている様で、その中に満月が光っています。
夜は吸血鬼達が生きる時間、それから、吸血鬼を狩るハンター達の生きる時間でもあります(即ち、ライルさんとリジェネさんの生きる時間でした)。
形ばかりに十字をきって、二人は歩き出します。
腰のホルダーに下げた銀の銃が、暗がりにぼんやりと浮かび上がっています。

ライルさんとリジェネさんの黒い夜

2008.6.22   初稿
2008.11.19   加筆修正 au.舞流紆
ライルさんは半分だけ吸血鬼で、吸血鬼ハンターのお仕事をしています、































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