出された紅茶を、リジェネさんは短いお礼と一緒に受け取って、ストラトス伯はにっこりと笑みを返す事でそれに応えました。
実のところ、リジェネさんはストラトス伯の事を嫌いではありません。
ストラトス伯は吸血鬼のくせに人間の血を吸いたがりませんし、ティエリアさんはもちろん、謂わば一族の敵とも言える吸血鬼ハンターであるリジェネさんにも親切かつ紳士的な態度を崩さないからです。
何より、ライルさんよりも鬱陶しくない、というのがその要因の大部分を占めていました。

(同じ造形をしているのに、どうしてこうも違うんだろう)

リジェネさんはストラトス伯を見る度にそう思うのですが、残念ながらその憂いがライルさんに伝わる事はありません。
ライルさんは空気の読めない、いいえ、敢えて空気を読まないタイプの吸血鬼でしたから、余計に性質が悪いのでした。
そして、もっと性質が悪い事には、リジェネさんはライルさんを撃つ事に抵抗を覚え始めているのです(昨晩も家を訪ねてきたライルさんに両手を引っ掴まれて「お前のためなら灰になってもいい」と言われ、「じゃあ今すぐ灰になってよ」と彼のお腹に銃口を押し付けたところまではよかったのですが、ライルさんがそれでも真剣な目で見つめてくるものですから、どうにも引き金を引けませんでした)。
ライルさんが毎晩何処かで人間を襲っているのを知っているというのにも関わらず、また、これまで何人ものハンターを返り討ちにしている大吸血鬼を撃つ千載一遇の機会だったにも関わらず、撃たずにいるだなんて、吸血鬼ハンターとしては明らかに失格でした。

(それもこれも、あの不潔極まりない男が毎晩尋ねてきては小うるさく捲くし立てるのが悪い、)

苛々がピークに達したリジェネさんは紅茶をぐいぐいと飲み干し、それを見たストラトス伯とティエリアさんは、おっかなびっくり顔を見合わせました。


リジェネさんの苛々な日々

2008.9.11   上 au.舞流紆
ほだされまくりのハンターリジェネさんとAKYなライルさん、
(ライルさんはリジェネさん以外の人間だったら平気で食べちゃう吸血鬼、曰く「俺だって人間の血を吸わずに済むならそうしたいが、断食の挙句に死ぬのは御免だ。まずは生きてなけりゃ一緒にいられないだろ、」という、)






























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