ところで、力の強い吸血鬼には、もれなく使い魔と呼ばれる召使のようなものが付き従います。
姿は様々、能力も様々で、獣に似た格好をしているものもいれば、虫のようなのもいました。
しかし、姿形や能力がどんなにかけ離れていたとしても、全ての使い魔に共通する事には、ご主人様の内面や魔力の質が具現化されているのだという事です。
ストラトス伯は元・力の強い吸血鬼でしたから、勿論使い魔を連れていました。



「…なんですか、これは」

ティエリアさんは地べたを這うような声で言いました。
ストラトス伯は目をぱちぱちします。

「何って、俺の相棒」

ハロ、ていうんだ。
そう言ってにっこりしたストラトス伯の後ろで、オレンジ色の丸いものがビョンビョンと跳ねては、「ヨロシク!ヨロシク!」と甲高い声をあげています。
大きさはメロンくらい、点のような目が時折ピカピカします。
それから、耳のようなものもパタパタしましたし、おまけに始終飛び跳ねていました。
はっきり言って、とっても弱そうでしたから、ティエリアさんはちょっとショックです。
持てる力を最大限に使っても、魔力を封印するのがようやくの事だったストラトス伯の使い魔ですから、もっと、こう、鋭い牙が生えているとか、頭が三つあるとか、ニョロニョロしているとか、凶悪でごっつい感じの使い魔を思い浮かべていたのです。
けれども、ハロは(どちらかと言うまでもなく)ファンシーでメルヘンな気配がしました。

(こんな使い魔を連れている吸血鬼に勝てなかったなんて!)

かつてない屈辱に落ち込んでるティエリアさんの横では、ストラトス伯が早速ハロに教えています。

「覚えたか、ハロ。ティ、エ、リ、ア。ティエリア」
「ティエリア!ティエリア!」
「よしよし」
「ティエリア!ティエリア!」

褒めてもらえた事がよっぽど嬉しいのか、それとも、ご主人様とおんなじようにティエリアさんを気に入ったのか、ハロはティエリアさんの周りをビョンビョンしてます。
そして、項垂れ気味のティエリアさんに向かって「ゲンキダセ!ゲンキダセ!」と耳もどきをパタパタしてみせました。
ファンシーでメルヘンな使い魔に、あろうことか励まされてしまったので、ティエリアさんはますますショックです。
そんなティエリアさんを見て、ストラトス伯は、やっぱりティエリアには少し賑やかすぎたかなあ、とまるっきり見当違いな事を考えて苦笑しています。


その日の夜、ショックから立ち直れないティエリアさんのために、ストラトス伯とハロがちょっと豪勢なお食事を作ったのは、また別のおはなしです。

ストラトス伯とティエリアさんとハロ

2008.5.4   上 au.舞流紆
ハロウィンパラレルその5、
球体すきなので出してみた、






























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