ある日、ティエリアさんは黄色いカボチャの上へ腰掛けていました。
地べたへつかずに宙ぶらりんになった足が、ぶらぶら揺れています。
結構な背丈のあるティエリアさんが腰掛けても足がぶらぶらできるほどのカボチャですから、とっても大きいカボチャです。
ところが、そのカボチャはストラトス伯にとっては至って普通の大きさのカボチャでした。
どういうことかと言いますと、つまり、ティエリアさんは身体の大きさがエリンギくらいになってしまっているのです。
そして、その原因は、ティエリアさんが作っていたお薬の試作品でした(作ろうとしていたお薬の効能は物の大きさを縮めるようなものではなかったのですが、あくまでも"試作品"ですから、このようなおかしな結果がでてしまうことも間々あるのです)。


「ちょっとした休養だと思えば良いじゃないか」

ストラトス伯はそう言うのですが、当のティエリアさんは首を捻っています。
書きかけの論文が幾らかありますし、薬草畑には試しに植えて経過を見ているものもあります。
頼まれている他のお薬の納期だって、だんだんと迫ってくるのです。
そういったあれやこれやのことを考え、かつ、この数日間で味わった不自由の数々を思い返すと、カボチャの上へ座っているティエリアさんは、はあ、と溜め息を吐くばかりでした。

そんな具合でへこんでいるティエリアさんを見ているストラトス伯は、なんだか大変なことになったなあ、と思う一方で、少し喜んでもいます。
先程の言葉のとおり、毎日毎日研究に勤しんでいるティエリアさんのちょっとした気分転換にでもなれば、と思ったのです。
それに、エリンギのような大きさになってしまったせいで着る服がなくなってしまったティエリアさんのために小さなお洋服を縫ってあげたのですが、それがなかなか楽しかったという極めて個人的かつ若干不謹慎な理由もあります(ティエリアさんが小さくなってしまった最初の日などは、「寝巻きを作ってほしい」と言われて作り始めたものが、のめり込み拘りぬきすぎて、いつの間にか豪勢なドレスになってしまったほどでした)。
ですから、溜め息を吐いているティエリアさんを見ながら、刺繍は何処までいれていいんだろう、レースは何処まで使っていいんだろう、と次に作るお洋服に関して一人でそわそわしつつ、三時のお茶を淹れてます。
そのお茶にしても、自分の分はいつものポットからいつもカップへ注ぐのですけれども、ティエリアさんの分はドングリが被っている帽子で作った小さなカップへスプーンからぽたぽたと注いでいます。
そして、それを見ているティエリアさんは、ますます深い溜め息を吐くのでした。


この数日後、お薬の効果が切れたのか、ティエリアさんは無事にもとの大きさに戻ることができました。
ストラトス伯はそれをちょっと残念に思いつつ、小さなお洋服やこまごまとした生活用品の類を捨てずにワードローブの奥へこっそりと仕舞ったのですけれども、それはティエリアさんには内緒です。

ストラトス伯とエリンギくらいの
ティエリアさんのおはなし

2009.9.22   上 au.舞流紆
ハロウィンパラレルその20、お店で売られていたエリンギを見た時に「あ、ティエリアがたくさん」と思ったので、
(そのうちに関連エピソードでも、特に豪勢すぎる寝巻きと畑のお手入れとお風呂タイム辺りを、)






























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