さて、ティエリアさんからしてみると、吸血鬼というのはだいぶへんてこな習性やら特徴やらがある生き物ですが、此処へきて、それをまた一つ噛み締めていました。
今日は3月の3日目。
ストラトス伯が生まれた日です。
ですが、そんな素敵な日のストラトス伯は、朝から布団に潜って、げほげほ言ってます。
それから、鼻を啜ったり、鼻をかんだり、熱っぽい息を吐いたり、鼻をかんだり、うんうん唸ったり、鼻をかんだりしていました。
人間でいうところの、風邪をひいた時の様子にそっくりです。
けれども、これは風邪ではありません。
では何かといいますと、これは吸血鬼の身体にお誕生日の日にだけ起こる、おかしな現象の一例なのでした。


吸血鬼という存在は、その魂や身体の多くが"魔力"から成り立っている生き物です。
ですから、その魔力の質や量がほんの少し変化するだけでも、多大な影響が出てしまいます。
その具体的な例を挙げるならば、数年に一度の周期でやってくる魔力が激減する日をそれと言うことができますが、実はその他にも色々なことが魔力の質や量を左右するのでした。
季節、月の満ち欠け、それに、お誕生日です。
中でもお誕生日というものは厄介で、この日には身体を形作っている魔力がとっても不安定になるものですから、その時々の魔力の変化の仕方によって、いろいろなことが起こってしまうのでした。
一時的に目が全く見えなくなったり、見た目が若返ってしまったり、血をものすごく不味く感じたり、顔が紫色になったり、ほんとうにいろいろです。
正確には"病気"ではないので、症状は一日で消えてしまうのですが、それでも、厄介といえば厄介で、面倒なことには違いありません。
そして、今年のストラトス伯は、悪寒に微熱、くしゃみ、鼻づまり、そういった症状に悩まされていました。


「悪いな、迷惑かけて」

ベッドまで借りちまったし。
そう言ったストラトス伯は、ずず、と鼻を啜ります。
ティエリアさんは、「かまいません」と首を横に振りました。

「去年よりは随分マシです」

そんな風な事を言いながら、ショウガ湯のマグカップを差し出してきます。
ストラトス伯は、そのマグカップを受け取りながら、少し苦笑いをしました(去年のお誕生日の症状は、髪の毛が引っ切り無しに伸びてくる、というもので、ティエリアさんと二人で一日中鋏を動かしたり、切った髪をひたすら掃いたりしていた思い出しかないのです)。
ショウガ湯を啜っては、くしゃみを繰り返しているストラトス伯を、ティエリアさんは、やれやれ、といった風な表情で眺めています。
でも、悪い気はしていなくて、ベッドの脇に置いた椅子へ腰掛けて、なにくれとストラトス伯のお世話を焼いています。
そして、ストラトス伯はなんだかそれがこそばゆくって、ちょっとだけ嬉しかったりもするのでした。


そんな具合で、素敵、とは正面切っては言い難い一日ではあったのですが、その日もやっぱり、あばら家の時間は穏やかに、のんびりと過ぎてゆきました。

ストラトス伯とティエリアさんと
おかしな誕生日のおはなし

2009.3.3   上 au.舞流紆
ハロウィンパラレルその18、お誕生日おめでとう(?)






























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