オタクなニールさんとAV男優なライルさんには、妹がいます。
エイミーちゃんです。
エイミーちゃんは、小さな会社に勤めるOLさんをしています。
会社では仕事のできる期待の新人として有望視されていたりもしますし、ルックスだってとっても可愛いものですから、ちょっとしたマドンナ的存在だったりします。
そんなエイミーちゃんには、もう一つの顔がありました。



ある休日の前夜、エイミーちゃんは机に向かって、鬼の形相でペンを走らせていました。
手元のA4サイズの紙には、縄で縛り上げられてアレやコレをされている男の子の絵が描かれていて、それは幾枚も幾枚も辺りに散らばっています。
その横では、同じく机に向かっているリジェネさんが、紙に消しゴムをかけていました。
丁寧に、けれども、迅速に、鉛筆の線が消されてゆきます。
そのまた向こう側では、ニールさんがパソコンに向かっていて、諸々の調整をしたり、指定の番号どおりにトーンを貼ったりなんていう、デジタルな方面の作業をしています。
ライルさんはというと、部屋の隅っこでエイミーちゃんが描き終えた紙に地味に風を送ったりしていました。
そうです。
普段は全く普通のOLであるエイミーちゃんは、実は、とっても腐女子で同人作家なのでした(それも、毎回壁際配置の超大手サークルの同人作家さんで、繊細な心理描写と過激な陵辱表現のスーパーギャップに定評があります)。

「…ペン入れ終わったぁー!」

エイミーちゃんが、大きな伸びと一緒にそんな声をあげますと、ニールさんとリジェネさんは口々に「お疲れさん」、「良かったね」と声をかけました。
もちろん、二人とも手元は休めません。
そんな二人に、エイミーちゃんが言います。

「いつもごめんね、ニールお兄ちゃん。それに、リジェネさんも」
「いいさ。持ち帰りの仕事もそんなに無いし」
「僕も楽しんでやってるから、気にしないで」
「ありがとう」

お礼を言ったエイミーちゃんも、お返事をしたニールさんもリジェネさんも、みんなにこにこしています。
和気藹々、そんな言葉が似合う感じの、素敵な空間です。
メソメソしているのは、みんなの手元にある紙に描かれている男の子と、それから、ライルさんだけでした。
ライルさんは、エイミーちゃんが自分にはお礼を言ったり笑顔を振りまいたりしてくれないのが、ちょっと哀しくって、悔しいみたいです。

「俺には何にも無いのかよ!」

そんな風なことを喚きながら、下敷きで原稿用紙を扇いでます。
此処だけの話、AV男優のお仕事をしているライルさんは、実は二次元の過激描写を大の苦手にしていますから、目線はあくまでエイミーちゃんの上です(ライルさん曰く、「だって、二次元の過激描写って、変に生々しいじゃないか」だそうです)。
そんなライルさんに向かってエイミーちゃんが投げた一言は、なかなかに厳しいものでした。

「だって、ライルお兄ちゃん、何ッにもできないんだもん。ゴムがけさせたら紙面を見ようとしないから変なところにゴムかけて紙破くし、かといって、デジタル処理なんてもっとできないでしょ?しかもコピー誌の表紙を折らせたら絶対4ミリ位ずれてるし…、この地上からAV男優っていう職業が消えたら、特技ナシ・甲斐性ナシの正真正銘"マダオ"になっちゃうわよ」
「エイミー、お前…!」
「特技がド鬼畜プレイと言葉責めっていう時点で、なんだかもうマダオの匂いがするけれどね」
「リジェネまで…!」

精神的にフルボッコにされたライルさんは、いつもの自身たっぷりの態度は何処へやら、部屋の隅に蹲って「の」の字を書き始めます。
エイミーちゃんが言ったのは、どれもこれも本当のことでしたから、正直者のニールさんは何のフォローもできません。
そして、ライルさんにとってさらに可哀想だったのは、今現在の状況がある意味での"戦場"だったことです。
やるべき作業はまだまだ残っていますから、誰もライルさんを振り返らずに、手を動かし始めてしまいます。
マウスをクリックする音や、紙を折る音なんかに、ライルさんが鼻を啜ったりする音はすぐに紛れて、消えていってしまいました。



その翌日、無事に即売会を終えたエイミーちゃんとニールさんとリジェネさん(ニールさんとリジェネさんは売り子のお手伝いさんです)が帰宅すると、忘れ去られたライルさんが膝を抱えて部屋の隅っこへ転がっていて、彼のテンションをもとに戻すのに四苦八苦したのですけれども、それはまた、別のおはなしです。

おたにる。番外編
〜その女、最強につき〜


2009.3.21   上 au.舞流紆
エイミーちゃんは原稿の参考資料としてライルさんからAVを貰っています、
彼女のイチオシ作品はライルさんとリジェネさんの2作目の共演作品「強姦タクシー」です、(最悪だ、)






















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