ニールさんとティエリアさんが劇的な出逢いをした、そのすぐ後、ニールさんとライルさんとリジェネさんとティエリアさんは、とあるファミレスのボックス席にいました(煙嫌いのティエリアさんを気遣っての禁煙席です)。
なんだか食事どころじゃなさそうだな、と思ったライルさんが、「とりあえずドリンクバー4つ、」と注文をしている横では、早速とんでもないことになっています。


「まさか君がニールのことを知ってたなんて、」

そう口にしたのは、ライルさんのお隣に座っているリジェネさんです。
それに対して、異常なほどニールさんにくっついて座っているティエリアさん(後退りに後退ったニールさんは、可哀想なことに二人掛けの席の四分の一くらいのスペースへ押し込まれています)は、「知らないほうがどうかしています!」と声をあげました。

「彼は一時期「ロックオン・ストラトス」のハンドルネームでプログラミング業界を騒然とさせた神です。その頃の僕は中学にあがりたてで、プログラミングの「プ」の字どころか「p」にも満たない知識しか持ち合わせていませんでしたが、当時の彼が無償で配布していたプログラムやコンパイラといったらもう…、今思い出しても興奮してどうにかなりそうです」

そう言って、うっとりと溜め息を吐くティエリアさんを見て、ライルさんもリジェネさんも、おんなじことを思いました。
つまり、「大丈夫、もうどうにかなってるよ」、ということです。
ニールさんは、オタクになる前、即ちわりと大昔のことを持ち出されたのがたいへん恥ずかしいようで、顔を真っ赤にして、水を飲んでます。


その後も長々と続いたティエリアさんのおはなしによると、現在彼が趣味にしているプログラミングを本格的にお勉強し始めたのは、ロックオン・ストラトスことニールさんの影響によるもので、ニールさんがネット上から姿を消してから後は、どうにかしてコンタクトを取りたいと思っていた、ということでした。
何故ティエリアさんがニールさんの顔を知っていたかに関しては、マイナー雑誌の隅っこに掲載された、たった一枚のニールさんの写真が、その要因だそうです(ちなみに、ティエリアさんはその雑誌を「保存用」、「保存用(スペア)」、「貸し出し用」、「貸し出し用(万一の紛失に対する備え)」、「閲覧用」の計5冊所持していて、尚且つ、スキャナで取り込んだニールさんの画像をプリントアウトしたうえでラミネートし、後生大事に持ち歩いているのでした。おんなじ顔付きのライルさんが横にいたにも関わらず、ニールさんがロックオン・ストラトスだということを一発で見抜いたのは、執念としか言いようがありません)。


そんな具合でニールさんを神と崇め奉っているティエリアさんですから、普段の仏頂面やツンケンした態度、刺々しい言葉遣いは何処へやら、水をちびちび飲んでいるニールさん(ティエリアさんが通路側に座っているので、折角のドリンクバーですが、飲み物は取りに行けていません)にべったりです。
これには、流石のライルさんとリジェネさんもびっくりしています。

「おい、お前の兄貴って無愛想でとっつきにくいんじゃなかったのかよ」

こそこそと耳打ちしてくるライルさんに、リジェネさんは「無愛想でとっつきにくいよ。無愛想でとっつきにくうえに、初対面の相手でも構わずにこき下ろしたり、顔面に水浴びせて帰ったことだってあるよ。こんなティエリア、僕だって見たことない」と返します。
そういうわけで、ライルさんは、ちょっとこいつは色んな意味でヤバいんじゃないか、と思っていましたが、けれども、リジェネさんは驚くのと同時に、これはチャンスかもしれない、とも思っていました。
中身に多少問題がありそうですが、ティエリアさんの見た目はリジェネさんとそっくり同じですから、ニールさんのストライクゾーンを確実についています。
当初から問題視していたティエリアさんの無愛想ぶりは、解消されているどころか、それを補って尚余りある感じです。
なにより、これを逃したら、ニールさんもティエリアさんも一生恋人なんかできないかもしれません。
ですから、リジェネさんは言いました。

「そうだ、ティエリア。ニール、今はフリーなんだって。これを機会に付き合ってみたら?」

その言葉が放たれた3秒後に、ニールさんとライルさんが同時に水とコーヒーを噴き出しました。
二人とも「なんてことを言い出すんだ」という目でリジェネさんを見ながら、げほげほしています。
そんなニールさんに紙ナプキンを差し出していた当のティエリアさんは、そのさらに3秒後になってようやくリジェネさんの言葉を理解したらしく、リジェネさんの方を向いて目をぱちぱちしています。
ぱちぱちしていましたが、おもむろに靴を脱ぎ始めました。
そうして、座席へ乗り上げて正座をすると、三つ指をつき、真面目な顔でこう言ったのです。


「僕は男ですから子供は産めませんが、貴方が欲しいと思うなら養子を取っても構いません。犬・猫・その他生物に対するアレルギーの類は一切ありませんから、ペットもお好きにどうぞ。税理士と司法書士の資格も持っていますから、遺産その他の管理も任せてください。先に謝っておくと、料理は全くできません。この間目玉焼きを作ろうとしたらフライパンが破裂したので、適正が無いようです。…こんな不束者ですが、」


よろしくお願いします。
そう締めくくると、ティエリアさんは頭を下げました。
話が早いことに、ティエリアさんの思考は、すでに将来をしっかりと見据えているようです。
ニールさんとライルさんは、口許からボタボタと滴る水やらコーヒーやらを拭うのも忘れています。
特にニールさんの脳内は、「w背drftgyふじこlp;@:」という具合で大パニックだったのですが、大パニック状態でも、どうにも年下の子を放っておけないお兄さん属性は健在でした。
ですから、静かに顔を上げたティエリアさんが、なんとも不安げな表情で見つめてくるのに、つい、口走ってしまいます。

「こ、こちらこそ、」

よろしく、とは、ニールさんは言えませんでした。
何故って、またしてもティエリアさんがニールさんに抱きついて、そのうえ、キスまでしたからです。
ライルさんもリジェネさんも、またまた吃驚仰天して、目をまんまるにしています。
真っ赤になって、今にも気絶しそうなニールさんに、ティエリアさんが言いました。

「貴方となら何でもできそうです。二人で良い家庭を築きましょう」

ティエリアさんのにっこりした顔が、その日のニールさんの最後の記憶でした。




そんなわけで、恋人どころか生涯の伴侶を見つけてしまったニールさんは、今ではわりと幸せな毎日を送っています。
相変わらずのエロゲ会社勤めで、オタクなライフスタイルも変わりませんが、幸い、ティエリアさんはニールさんのことが心底大好きでしたから、日々の生活に文句を言ったり軽蔑したりはしません。
それどころか、「お好きだと聞いたので、」と言いながら、ニールさんの寝室にメイド服で乗り込んでくる始末です。
その他にも多々巻き起こされたティエリアさん独自の旋風の数々に、最初はややドン引きしていたニールさんも、自分のために一生懸命になってくれるティエリアさんをだんだんと好きになって、今ではとっても大事に思うようになりました(余談ですが、指輪は買ってあげられていません。ニールさんはしがないサラリーマンでしたし、毎月すごい量のエロゲや同人誌を買うものですから、なかなか貯金ができないのです。「自重できなくてすまん」と謝ったニールさんに、ティエリアさんが「僕には貴方と作ったプログラムがあればそれだけで十分です」と答えて、ライルさんとリジェネさんの涙を誘ったのは、わりと伝説です)。


「気をつけて」

今日も、ティエリアさんがお家の外まで見送りに出てきてくれました。
ニールさんはちょっと笑って、「ああ。また後でな」と返すと、車に乗り込みます。
エンジンをかけて、アクセルを踏むと、サイドミラーに映っているティエリアさんが、みるみるうちに小さくなっていきます。
今日は待ちに待った即売会。
アフターは一次会だけ参加して、その後はティエリアさんとお食事に行く約束をしているものですから、ニールさんはwktkしています。
よく晴れた空の下、ニールさん愛用の痛車がお日様の光をきらきらと反射しながら、有明方面へ向かっていました。

おたにる。F

2009.3.8   上 au.舞流紆
そんなわけで超展開ファイナル、
(特に反省してはいないが作中のジョナs…ファミレスにいた店員や一般客のみなさんには申し訳なかったと思っている、)
























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