リジェネ・レジェッタによって唐突に齎される暴力といえば、一般的な見方をすれば、それはもう酷いものだった。
とにかく一方的で理不尽なのだ。痛みに呻けば「五月蝿い」と殴られ、耐えれば「つまらない」と蹴られる。
要因(果たしてこれをそのように言っていいのか解らないが)でさえ酷かった。俺の顔がニールに似ている、たったそれだけの理由だ。
彼はヒステリックな性質で、且つ、執拗にして完璧主義者だったので、俺の手も足も腹も顔も丁寧に踏み躙られる。それから、仕上げとばかりに髪を掴まれ、床だのテーブルだの壁だのと手当たり次第に仲良くさせられた。おかげで軽い脳震盪を起こしていて、息をするにもぐらぐらと視界が揺れる。しかし、それは既に慣れつつある苦痛だ。切れた口腔に沁みる血も。
ぶれた視界においても、彼は美しく在った(どれほど一方的で理不尽な仕打ちであっても、彼はそのように在った)。

「貴方が悪い、」

悪びれもせずに、リジェネは言う。荒い息の下、やや掠れた声だ。

「貴方が悪いんだ、」

言いながら、彼は、その白い指に絡んだヘイゼルの頭髪を心底鬱陶しそうに払い落とした。滲む汗のためか、それでも落ちない幾本かに焦れ、興奮で震える指で取り除こうとし、それも失敗すると、また俺を蹴りつける。尖った靴の先が、腹にめり込む。

「っ、ぐ、」

とうとう血とも胃液ともつかぬものを嘔吐した俺を、リジェネは潰れた虫でも見るような目で見下ろしていたが、やがて、興が削がれたような、冷めた表情をすると、幽鬼のように部屋を出て行った。閉まったドアの向こう側で、ガラスが割れる音がする。恐らく、何かに当り散らしているのだろう。
室内には、取り残された俺の耳障りな呼吸だけが響いていた。
彼は手加減が実に上手い。激痛があるわりに、骨は折れていない。そのように考える俺は、同時に、今夜彼をどのように喚かせるかを考えている。
散々に殴られた日は此方も気が立っているから、流石に甘やかしてやるような気にはならない。準備も無しに突き入れてやるか、それとも、泣いて懇願するまで焦らしてやるか。身動ぎ出来ない程に縛り上げてやってもいいし、いっそ何か体内に入れたままで明け方まで放置してやってもいい。何時かしてやったように、起立した性器を靴底で思い切り踏み潰してやるのもいいかもしれない(彼は随分と悦んで吐精していたようだし、それをティエリア・アーデだと思えば、また違った興奮を覚える)。
その様を想像し、血が溢れかえる喉で低く笑ったが、それすらも苦しくて咳き込んだ。床へ色付いた体液が飛ぶ。
隣室の音は、まだ、止まない(そうして、俺達は不可視の夢を幻視する)。

閉鎖的遊戯場の偏愛


2008.8.6   上 au.舞流紆
ライリジェ日常風景、





























SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送