リジェネ・レジェッタは憎らしいほどに似ていた。
水を含んだような紫の髪に血を固めたような瞳、石膏の肌。
髪型や声を除けば、何もかもがティエリア・アーデそのものだ(故に、"似ている"で留まっていた)。
彼を見る度にじりじりと腹の底を焼く感情は、最早何なのか解らない。憎悪、嫉妬、寂寞、憤怒、悲哀、どれでもなく、全てであり、痛みを含んでいた。そして、酷く愛しかった。
リジェネもまた、俺と同じ(もしくは、それ以上の)ものを、ニールをそっくり写し取ったような俺に対して抱えているからだった。


(俺達のうちの、そのどちらともが、自らの片割れを手に入れたいと切望していて、尚且つ、それを他人に奪われていた。その他人が本当に"他人"だったならば、このように可笑しな事にはならなかっただろう、とは、やはり俺達のうちのどちらともが考えている事だ。俺は彼の片割れに、彼は俺の片割れに。その上、性質の悪い事には、どうやら彼ら(つまり、俺達の可愛いニールとティエリア)は随分と互いに入れあげているらしかった)
望むものが只管遠ざかっていくばかりの現状に苛立ちを募らせたリジェネが、俺を酷く殴りつけた事に端を発した奇妙な遊びは、今でも続いている。
悪い夢のようだと思いながらものめり込むのは、それでしか得られないものがあるからだ。
苦いが、甘い。それに尽き、それだけが俺達を慰めた。


丸まったシーツの端を、白く尖った踵や爪先が蹴る。伸ばされた手を乱暴に叩き落し(場合によっては、優しく引き寄せ)、聞くに堪えないような淫靡な言葉(場合によっては、過剰な甘さを帯びた睦言)を落とす。
ニールを愛すティエリア、ティエリアを愛すニール、ニールに愛されるティエリア、ティエリアに愛されるニール。
投影は容易だ。幻視の要素は何もかも揃っている。
憎むのも容易かった。享楽に耽る互いを見ては冷笑した。俺が組み敷いて陵辱しているのはティエリア・アーデで、リジェネが偽りの歓喜で以て淫らに銜え込んでいるのはニール・ディランディだった。
憎悪の対象を陥落させる妄想は、この上ない、途方も無い快楽だった。

「可笑しくて仕方が無い、」

達した後の乱れた息遣いのまま、リジェネは笑う。肋骨の浮いた剥き出しの白い胸が、痙攣に似た様子で動いた。
何の事について言っているのかは言及されないが、俺にはよく解っていた。リジェネ・レジェッタはライル・ディランディであったからだ。証拠、というほど確たるものではないにせよ、俺の唇も噛み殺せない笑みに歪んでいる。
全く、可笑しくて仕方が無い(全て夢想と知って、それでも充足や痛みを得ては悦んでいるのだ)。
真性のマゾヒズムだな、と肩を竦めてみせると、リジェネはますます笑った。笑って、それだから貴方を愛してる、と言った。
俺も彼を愛していた。

わたしがわたしを愛するように、

2008.6.12   上 au.舞流紆
救済要請を頂いたので書いてみました、ライリジェがドSと見せかけたドMだととてももゆる、




























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