荒い息も治まらないうちに、筋張った手が下腹部の辺りをざらりと撫でる。
まただ。
一刻も早く熱から逃れる事だけに専念しようと閉じていた目を開けると、ロックオン・ストラトスは軽薄とは言い難い表情を浮かべていた。幼かった(つい先程まで二人して溺れる様に耽っていた行為自体は全く以て幼くはなかったが、それは幼いと形容せざるを得ないものだった。少なくとも、現時点の自分が得ているボキャブラリーにおいては)。

「何か、意味でもあるのですか」
「ん?」
「何時も撫でるでしょう」

無意識なのですか、と問うと、半々かも、という実に曖昧な答えが返ってきた。
大体にして、そうだ。この男は此方の問いかけに対して、かなりぼやけた答えを寄越す。そして、大体にして、俺はその靄の奥に在ると思しきものを見出す事が出来ない。今もそうだ。それは堪らない苦痛だった。
その苦痛を幾らも解さない彼は、自らの掌を幾度か開いたり閉じたりして(まるで、ハッチの開閉の様に慎重かつ軽々しく開いたり閉じたりして)、何事かを呻吟し、けれども最後には、微かに片眉を上げてみせた。

「さっきまで俺の中に在ったものが其処に在るのかと思うと不思議なんだ、多分」

手品みたいじゃないか、なんだか。
そう続けた彼は、俺の顔を覗き込むと、「ああ今思ってる事は口に出すなよ。何か色々ぶち壊されそうな嫌な予感がするから、」と早口に告げた(或いは、それは正しい選択であったかもしれない)。
仕方なく、貴方の感性が理解出来ません、とだけ述べると、彼はただ笑って、もう一度ざらりと撫でる。燻るような熱を煽る事のない、柔らかな温かさを帯びた掌だった。

ジーンの未知

2008.6.25   上 au.舞流紆
「鼓動の数だけ死ぬ」のロックオンの主義主張と矛盾しますが、まあ、別物という事で、






















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